オトコの食事(2002.5)

 女房が10日ばかり家を留守にした時のことだ。兵庫の娘の家へ行っていた訳だが、家には、会社勤務の息子がいるだけ。それも残業残業で、夜中に帰ってきて寝るだけ。いろいろ言い付けて女房は行ったのだが、面倒くさいことばかり。住居と一体の事務所で仕事をしている私にとって、まず、3度の食事のことを考えた。妙案が浮かんで、早速納戸からホットプレートを掘り出した。一番奥で、上には何やらいっぱい載せられていたホットプレートは、掘り出すという表現がピッタリの状態だった。

 我が家のホットプレートは、食い盛りの子どもたちがいた時に買った物だから、結構大きめである。テーブルにセットし、醤油、塩、コショウを傍らに置く。私は元来醤油味が大好きだ。これだけの調味料で、何でも食べられる。キャベツ、玉ねぎ、ニラなどがあったから、あらかじめきざんでおく。これで何度も厨房へ出入りする必要はなし。

 最初に食べたのが、昼食のトースト。食パンは冷凍。何とか2枚切り出して、そのままホットプレートにのせる。片面がすぐ焼ける。ひっくり返して、焼けた面にマーガリンを塗る。ハムがあったから一緒に焼く。カチカチの食パンが、いい色に焼き上がるまで3分ぐらい。火を通したハムをのせ、ホットなハムトーストの出来上がり。トースターよりフックラサックリ。ホットプレートって遠赤外線効果があるのかな、なんて感心しながら美味しく食べる。野菜も、醤油を直につけながら焼いて食べる。ホットプレートの焦げ、汚れは、キッチンペーパーを濡らして拭きとるだけ。油もいらない。食べ終わっても、片付けるのは、箸と取り皿1枚だけ。してやったりと一人でほくそ笑む。

 味をしめるとバリエーションが豊かになる。冷凍イカをさばいてポッポ焼き。でもこれが一番ホットプレートを汚す。一回だけ、ビール片手に息子と一緒にやった。とろけるチーズをのせたトースト、目玉焼き。焼きそばは、野菜と麺を別々に焼く。そして別々に食べる。ソース焼きそばがスナック焼きそばに変わっていく、その全プロセスを食す。ご飯物だと、残ったご飯を炒飯にする一手。私の炒飯は、ごく簡単。ご飯を炒める。炒めながら塩を少々、醤油をかける。オカカを混ぜる。最期に生卵を落としてかき混ぜる。保温にセットして美味しく食べる。おかずは、何でも火を通して食べられるものを探して一緒に焼くだけ。毎日バーベキュー料理ということか。
 冷凍庫に切り餅があった。いつから入っているのか分からないが、かなり古そう。これもホットプレートへ。さて、古い冷凍の切り餅は、磯辺も安倍川も美味くない。とっておきの食べ方を教えよう。ホットプレートで凍ったままでいいから焼く。表面がひからびているからうまく焼けないだろうが、芯がなくなる頃バターをのせる。バター焼きになって柔らかく焼き上がる。皿に取って、さてその後、私は醤油をたらす。バターと醤油がこんなに相性がいいとは。美味いこと請け合い。

 女房から電話があった時、状況を話してやると、なんだか言葉にならなかったようだ。そのせいか、帰宅が1日早まった。帰ってきてテーブルに鎮座しているホットプレートを見ても、何も言わない。少しは効用が分かったかなと思ったのだが、2時間後には、黙って片付けられていた。
 今度チャンスがあったら、スープ物にチャレンジしたい。乞うご期待。